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FP業務はAIに奪われるのか?相続の相談現場から感じること

AIの目覚ましい発展により

さまざまな業界の仕事がなくなるのでないかと

いわれています。


「FPの業務はAIに奪われるでしょうか?」


環境の変化にどう対応するか


先日、日本FP協会が主催するFPのための祭典

「FPフェア Tokyo」のトークセッションに

登壇させていただきました。


独立系FPとして活動している実務家の先輩方と

ご一緒させていただいたのですが

その時に司会者から尋ねられた質問が


「FPにとってAIは驚異でしょうか?

FPの業務はやがてAIに奪われるでしょうか?」


といった質問でした。


私を含めて3人のパネリストが

それぞれの見解を述べましたが


「FP相談に関しては

AIに奪われることはまったくない。

むしろAIが発展すればするほど

血の通った人間にしかできない

傾聴力・問題解決能力が求められる」


と私は答えました。


平井笑顔 環境にどう対応するか


抽象的な回答だけではわかりづらいと思うので

日々相談業務にのっている実務家として

FPによく寄せられる相談の中から

具体例をご紹介します。


例えば

相続のご相談でよくあるのですが

複数の不動産を相続したお客様が

相続税を払うのに保有している金融資産だけで足りないため

相続した不動産のどれかを売却して

納税資金を用立てるというケースがよくあります。


あるいは

納税資金は足りるものの

世代交代したのをきっかけに

不動産資産の有効活用や入れ替えを検討したいと思うので

どの土地を残してどの土地を売るべきか

あるいはすべて残すとしても

今よりも効率の良い運用方法があるのかどうか

診断して欲しいという

ご相談もよくあります。


こうした

不動産の有効活用についての

ご相談があった時には

まずはそのエリアの類似物件の平均利回りと比べて

同等またはそれ以上の収益を上げられているのか

数値であらわして比較していきます。


あるいは金融商品で保有していた場合には

それほどリスクの高い運用でなくても

20年・30年と保有していれば

年利3~4%の運用益を上げることは難しくありませんが

それと比較しても効率の良い運用ができているか

相対的に比較していきます。


アパート


金融資産と違って

不動産投資は


✅経費率が高い

✅手間がかかる

✅流動性に劣る

といったデメリットがあります。


一方で

✅相続税対策になる

✅ローンを借りられる

✅株価ほど値動きがあらくない


といったメリットもあります。


デメリットはなるべく軽減し

メリットは最大限活かす

投資を成功させるには

こうした工夫が必要不可欠ですが


不動産投資ならではの

こうした特性を活かした運用ができているかも

併せて診断していきます。


このように

あらゆる角度から調査・検証を行い

経済合理性の面からは

どの土地を売るべきか、残すべきか

あるいは運用の仕方を変えるとどうなるかといった

提案を複数パターンしていきます。


3


ただし、

提案を受けた後に

最終的にどの土地をどうするか

決定するのはお客様自身になります。


そして

ここからが本題なのですが


何度となく面談を重ね

提案を受けられた後に

最も利回りのいい不動産とそうでない不動産

経済合理性の面での優劣を理解はされても

最後の最後は

感情で決めるお客様が多いということです。


「その土地には思い入れがあるから手放したくない」

「とにかく自宅から遠い順に土地を処分したい」

とおっしゃるお客様は多いですし


「枕元に祖父が現れてその土地を売らないように言われた」などと

おっしゃるケースもあります


まあ、確かにそれもごもっともで

土地を何代にもわたり保有していたら

ご家族様や近隣にお住いの方との

さまざまな想い出がつまっていることでしょう


こうした時に

私たち独立系FPは

クライアントであるお客様と

そのご家族の皆様が

最終的にベストと思う判断をくだされるまで

ただゆっくりと丁寧に伴走するかたちになります


たとえば

これがリート法人の運用を任せられている

プロのファンドマネージャーだったり

不動産賃貸業を生業にしている方であれば

そんな甘いことは言ってられません


プロのファンドマネージャーが

期待される収益をあげられなければ

クビになりますし


不動産賃貸業で生計を立てている方であれば

破綻しないように

事業の経営効率を高めていくのは

経営者として当然です


そもそも

「投資に感情は要らない」

というのはよく言われることであり


株や投資信託で運用する場合にも

投資を成功させるためには

いかに感情を排除して合理的に行動するかが

大原則とされています


一方で

たまたま親や結婚相手が不動産投資をしていただけで

相続されたご本人は不動産投資をするつもりではなかったし

相続後もそんなに積極的にしていくつもりもない方もいます


投資を積極的にしている人からしたら

なんてもったいない話なのだろうと

感じるかもしれません


私も元々は不動産業界で

マンション用地をいかに安く仕入れるか

事業の利益率をいかに確保するかという世界で仕事をしていたので

FPに転身してからしばらくは

こういったケースのお客様からの相談があると

モヤっとすることも多く

慣れるまで大変でした


ところが今は

5000件以上のお客様の相談にのってきた中で

感じるのは

人の幸福は常に経済合理性と比例するわけではない

ということです


そもそも資産運用や儲け話に興味がないし

そういう話をすること自体が好きではないという人は

確かに存在します


身近な例でお話しすると

私はお金の話が大好きですが

夫はお金の話が大嫌いです


夫は資産運用に興味がないし

お金を増やそうとも思わないそうです


ただ家族が困らないくらいには稼いで

持てる範囲で生活していければそれでいい

と考えています


お金の話をされること自体がストレスと

いうので私はお金のプロですが

家でお金の話をすることはほとんどありません


そして、夫のように

経済合理性を最大化させることだけが

ベストではないと考える人も

いることは理解するようになりました


とはいえ

私たち独立系FPは

経済合理性を最大化し

お客様が理想とする人生を送られるよう

経済面からバックアップすることを使命としているので

保有されている資産の

経済合理性を最大化するご提案を

まずはします


ただ

故人の方と共に過ごした

土地や建物への愛着を心のよりどころに


遺されたご家族様が

これからの人生を

前を向いてスタートしていく上としたら

そこに経済合理性は関係ないかもしれません


そしてこういった

ご遺族の想いや感情は

ご本人でも気づいていないことが多く

何度も面談を繰り返し

丁寧にお話を聞いていく中で

心の奥にしまっていた感情が湧き出てくることが

多々あります。


これこそが

血の通った人間にしかできない

傾聴力であり

提案力です


単に経済合理性の面だけで

保有されている不動産を分析し提案することは

AIにできるかもしれません。

実際に最近は

投資用不動産を分析する高度なツールもあります。


しかし経済合理性以外の部分で

お客様の心の奥底に眠っている大切な想いを

聴きだすことはAIにはできません


相続にとどまらず

FPへの相談は

住宅購入や転退職など

その時にした決断によって

その後の人生が大きく変わるような

転機の時に寄せられることが多くなっています


いずれの場合でも

決断をする際には

経済合理性だけがすべてではなく

感情が大きく左右します


もちろん人によって個人差があるので

経済合理性だけを重視するのであれば

ひたすら経済合理性を高める提案になりますし

そこはクライアントの要望次第です


感情だけで決断して

家計が行き詰まるとしたら

それはナンセンスなので

最低限確保しなければならない

キャッシュフローにも

最新の注意を払います


いずれにしても

クライアントが理想とする人生を実現させるために

全面的にバックアップする

ファイナンシャルプランニング業務に関しては

AIに奪われることはこの先もないと信じています


非効率なことも

非合理なことも

いろいろあるからこそ人生なのかなと・・・


やっぱりFP業務はおもしろい!


平井 めちゃ笑顔


今回FPフェアに登壇させていただき

独立系FP業務について同業の方とあれこれと

トークセッションをさせていただいたことで

日々のFP業務で大切にしていることなど

想いを新たにさせていただきました


主催者をはじめ関係者の皆様、

ご参加いただいた皆様

ありがとうございました


| 11:06 | FP